出典:イタリアからの直接の報道
日付:2018年6月28日
6月27日、イタリアのペルージャ裁判所は2つの裁判所命令(462/2018と459/2018)を発令し、中国の新興キリスト教系団体の全能神教会の2名の女性信者を難民に認定し、庇護を拒否した現地の難民委員会の決定を取り消した。
裁判所命令462はとりわけ重要度が高い。庇護の希望者が「タイガーベンチ」を用いた拷問を受けたとの報告を「信憑性があり、完璧かつ理路整然としており、事細かに述べている」と判断しているためだ。タイガーベンチとは、中国で広範囲に使用されている拷問の手段である。囚人は手錠で金属製のベンチにつながれ、両足を前に伸ばす形で長時間座らせられる。囚人がもがくと、手錠はきつく締まるようになっている。
裁判所命令462は現地の難民委員会が庇護を拒否した3つの根拠を考察している。第一に、全能神教会の信者が当教会に所属しているという理由だけで、中国国内では逮捕および拘留される危険に直面しているとする説明に委員会は同意しなかった。しかし、裁判所は、邪教(「異教の教え」の訳が妥当だが、イタリアの裁判所は「迷信的なカルト団体」と解釈)の活動に携わった者に対して「中国の刑法第300条が3年から7年の懲役刑を処する」と規定しているため、庇護の希望者の説明は事実に即すると指摘した。また、裁判所は全能神教会が「定期的に更新される邪教のリスト」に1995年以来、記載されてきた点をはっきりと指摘した。
第二に、現地の難民委員会は、全能神教会が反家族を掲げているというメディアの報道に基づき、母に改宗させられたという難民の説明を信憑性がないとした。一方、裁判所は、信者である家族を介した改宗が実際には頻繁に行われているとした、Bitter Winterの編集長であるマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)氏による調査のほうが信頼に足るとした。
第三に、難民委員会は、本当に迫害を受けていたなら、庇護を希望している者にパスポートが交付されるはずがないとした。この点に関して、裁判所は専門家の見解をもとに、実際には「中国の審査の体制には穴があり、汚職が蔓延している」として、難民委員会の主張に異議を唱えた。
本裁判所命令は、学者が実施した最新の調査をもとに、マッシモ・イントロヴィーニャ氏の言葉を引用したうえで、「全能神教会の信者に対する迫害は十分立証されている。数千名が逮捕され、拷問および不審な状況下での死亡は数十件にのぼっている。また、邪教の廃止は中国政府にとって優先事項であること、信者を糾弾し、警察による逮捕に貢献する者には、金銭的な見返りが与えられることがわかっている」と述べ、中国の全能神教会が置かれている状況を正確に説明している。
同じ裁判官が発令した裁判所命令459は、裁判所命令462と同じ根拠を繰り返すものだが、拷問は含まれていなかった。実際には、庇護の希望者が個人的に迫害されていなくても、保護は与えられている。庇護を希望している信者の父親は全能神教会の信者であることを理由に逮捕され、暴行を受けた。そして、同様に逮捕され、暴行を受けた友人から、できるだけ早く中国を離れるべきだと忠告され、この庇護希望者はそうしたのだった。