当局は、「社会的安定のため」という口実で、新疆ウイグル自治区で多様な規則を実施している。こうした規則は現地の商業に影響を及ぼすばかりか、事業者を恣意的に痛めつける道具にもなっている。
「Bitter Winter」はこれまでにも、新疆ウイグル自治区 当局が「社会の安定化政策の実施」により、新疆 ウイグル 自治区 の住民や事業者の生活に負担を強いていると報道してきた。現在では、こうした負担は以前より深刻になっている。こうした中、事業者は、新たな規則を巡る様々な解釈により、違反と目され、罰金、逮捕、店舗の閉鎖といった憂き目に遭っているが、多くの者がこうした処罰は行き過ぎだと考えている。
政府が事業者に強いる負担には、暴動制御ツール(ヘルメットや防弾チョッキなど)の購入、自宅や店舗内への警報機や監視カメラの設置、警報が鳴った際の「社会安定団」への参加などが含まれている。新疆ウイグル自治区の当局はこうした規則を利用し、政府の要求に反対したり、協力しようとしなかったりする事業者を圧迫している。
「Bitter Winter」には、事業者が恣意的に嫌がらせをされているとの報告が多く寄せられた。2018年8月、警察は「保安検査機器のスイッチを入れず、政府の安定化政策に違反した」との理由で、新疆ウイグル自治区内のバインゴリン・モンゴル 自治州 のホテルの経営者を拘束し、「教育による改心」のための強制収容所 に1週間収監するとともに、罰金2000元(3.2万円)を科した。このほか、毎日の生活費、住居費、往復の交通費計620元(9800円)をすべて本人に支払わせた。
新疆ウイグル自治区当局はショッピングセンター、スーパー、ホテル、店舗などの場所に保安検査機器を設置するよう厳しく命令している。営業時間は機器のスイッチを切ることはできず、違反者には罰金、店舗の閉鎖、「教育による改心」のための強制収容所への収監などの懲罰が科される。このほか、彼らは暴動に備えた格好をしていなければならない。政府は「イスラム教徒はいつ反乱を起こしてもおかしくない」と想定しているため、事業者は暴動に備え、「社会的安定の維持」に向けた準備をしておかなければならない。
あるレストランの経営者は「もしもの暴動」に対処する準備を怠ったため、代償を支払うことになった。現地の警察が彼のレストランに突然踏み込んできたとき、ここの料理人が防弾チョッキを着用していないことが判明した。警察は「社会安定化政策に違反した」として、彼を逮捕し、「教育による改心」のための強制収容所に2週間収監し、その期間の交通費、生活費のすべてを本人に負担させた。同日、現地で服飾事業をしていた女性も、防弾チョッキを着ていないところを警察に見つかり、「家に帰って店を3日間閉めておけ」と、怒鳴られた。その後、彼女は「社会的安定の維持義務」に違反したとされ、本当に3日の間、休業することになった。
あるショッピングセンターのオーナーの劉(リュウ)(仮名)さんは「対暴動」「対テロ」関連の規則に従おうとしなかったため、逮捕された。警察は劉さんに対し、ビルの前にガードレールを設置するよう要求したが、劉さんは「何年もここを運営してきたが、『危険』と思えるような状況に出くわしたことがない」と返答した。すると警察は問答無用で劉さんに手錠を掛け、7日間拘置した。その間、劉さんは誰とも連絡を取ることが許されず、家族は彼の安否を心配した。劉さんは釈放後、警察のさらなる暴力を恐れ、8万元(126万円)を費やして、ガードレールを設置した。
カシュガル 市 のある通りにも、当局による厳しい検査が入った。現地からの報告によれば、西域大道にある店舗数件が様々な理由で閉鎖されたという。
2017年12月、運送トラックの運転手が酒・タバコ店の玄関口の前で商品を下ろすため車両を停めていると、警察が駆け付けてきた。彼らは運転手に早く車を出すよう命令した。店舗の経営者は、品物を下ろすため数分間ほしいと言ったが、警察は納得しなかった。これに対し、この経営者は「お前たちは重要なことは取り合おうとせず、どうでもいいことに首を突っ込んでくる。私たちは車道を塞いでいないじゃないか」と反論した。すると警察は、「公務の執行に協力せず、感心しない態度である」として、彼の店舗を強制的に閉鎖した。
西域大道のもう1つの店舗も閉鎖された。警察は店内で長く使われていなかった炊飯器を2台見つけ、「店内での炊事は禁止である」との理由で、店主の話を聞かず、炊飯器を使用した証拠もないのに、店舗を閉鎖した。3日後、店主は「以後、店舗内で炊事はしない」と記した保証書を警察署に提出することで、通常通りの営業を許された。
西域大道のレストラン「三兄弟金公鶏鶏肉美食店(三兄弟の黄金若鶏グルメ店)」については、店主が警報音が鳴った後すぐに「対暴動」訓練に駆け付けなかったとして、閉鎖が命じられた。また「巧媳婦面館(賢い主婦の麺店)」は、包丁にチェーンを付けていなかったため、警察から「対暴動」「対テロ」の規定に従っていないと咎められ、罰金の支払いを命じられた上、閉鎖された。
2017年から、新疆ウイグル自治区カシュガル市の通りには300か所あまりの警察署が設置された。設置間隔は約300メートルという。警察署では警察10人ほどが交代制で勤務し、各事業拠点の査察、取締りを行っている。こうした中、事業者は不当に、閉鎖されたり、罰金が科されたりしている。このため、事業者は怯えながら、増大する不満をひそひそと口にしている。
李在立による報告