中国共産党が「邪教」(異端宗教)リストに掲載されている禁止宗教団体への迫害キャンペーンを正当化する学術「研究」に5万8600米ドル支払う計画であることを、浙江省の極秘文書が明かしています。
2018年6月24日に浙江省反邪教協会が開催し、邪教専門の共産党警察部隊である 610弁公室 代表も出席した会議の議事録を含む極秘文書をBitter Winterは入手しました。
中国政府発行の文書は「邪教」を「カルト」と英訳していますが、これは誤っているだけではなく、中国の邪教「問題」は各国政府が直面している「カルトの問題」と同じだと海外に宣伝することを目的としたプロパガンダの一部にもなっています。実際は、「邪教」とは「異端宗教」を指し、思想的および政治的理由から政府に禁じられた宗教団体を特定するために明朝後期から使用されてきた言葉です。
浙江省政府が作成したこの文書には、地元の 中国共産党 が 法輪功 や 呼喊派(Shouters)、全能神教会をはじめとする「邪教」に対する党の立場を正当化する学術「研究」を研究者に行わせるために40万元(約660万円)の予算を組んでいることが明記されています。
1つの研究課題は「20世紀のアメリカにおける政府非公認のアンチカルト運動から、中国が邪教の信者の社会的支援と教育を推進するで学べること」とあり、これは、中国共産党がいまだにアンチカルトパラダイムに頼っていることを表しています。このようなパラダイムは、新興宗教を専門とする学者により否定されています。
別の省でも同様の取り組みが行われているという報告をBitter Winterでは受けており、この中には海外の学者やジャーナリストの買収工作も含まれています。
写真1~6:極秘文書
林一江による報告
全文(翻訳):
浙江省反邪教協会(告知)
ZPACA (2018) No. 17
議事録
2018年6月24日午後、浙江省反邪教協会が2018年度の研究課題について話し合い、決定するため、2018年度研究課題審査会議を開いた。省協会の劉力偉(リュウ・リーウェイ)会長、省共産党委員会の「邪教」防止事務所(別名、省610弁公室)の朱恒毅(シュ・ホンイー)部長、金国華(ジン・グゥォファ)副部長、張炳福(ヂャン・ビンフー)副部長、省協会学術委員会の王来法(ワン・ライファ)部長、王志成(ワン・ヂーチォン)副部長、陳永革(チン・エイカク)副部長、省協会の盧林方(ルー・リンファン)総書記がこの会議に出席した。
主要な議題:第1に、学術委員会の出席者が、各地域から協会に提出された37の反邪教理論研究課題に関して事前に行った審査の結果に基づき協議を行い、研究内容、研究チーム、これら課題の内容構成に従い24の研究項目と対応の予算基準を決定し、ここから、中国反邪教協会 および省社会科学計画事務所に研究課題案として提出するべき優れた研究課題を推薦した。第2に、省委員会の総書記が、研究課題の応募状況と各地域での一次審査結果の状況を出席者に報告し、学術委員会の意見に従い、2018年度の省としての研究課題案を提案した。
報告を受けた事務所の幹部は、学術委員会の提案に同意した:第1に、全地域で研究課題提出への関心を促進するため、幹部は3万元ずつの予算が割り当てられる8件の主要課題と、1万元ずつの予算が割り当てられる16件の一般課題を選出することに同意した。これらの課題への合計で40万元の予算がは、省の共産党委員会カルト防止事務所の特別支出項目として捻出される。第2に、学術委員会の幹部の意見に従い、省協会の書記は決定された研究課題に関する特別指導を行い、省の社会科学計画事務所の提案として提出する課題と、中国反邪教協会の提案として提出する課題を定め、課題の応募者が研究規則に従い学術研究を行うよう促進した。
続いて、学術委員会の幹部3人が省協会の研究課題の決定方法について意見を述べ、省協会の反邪教理論に関する研究を促進するための助言と提案を行った。王来法部長は反邪教の取り組みの理論研究を強化し、課題研究の継続の重要性を訴えた。また、理論研究課題を決定すると同時に、優秀な研究者を発掘、奨励し、反邪教理論研究チームの育成を強化することで肉厚な支援をすることを提案した。陳永革副部長は、より多くの大学教授や学者が反邪教理論研究に参加し、課題決定に手腕を発揮するよう、現行の反邪教研究が反邪教から視野を広げ、新しい時代や先見的な見方を取り入れ、今後の反邪教の取り組み方法を考え、反邪教に関する研究論文を増加させる、反邪教理論研究の応募を促進するための大学・単科大学へのプロパガンダ計画の実施など、プロパガンダを強化するさらなる取組みを提案した。同時に、重要な課題の研究を実施し、これらの課題への公募などを通して研究を進めていくメカニズムを推奨した。王志成副部長は、反邪教理論研究が協会の反邪教の取り組みとその社会的影響力を強化させ、より影響力のある研究成果を促進するため、理論研究のための人材および資本への投資を増やすべきであると強調した。同時に、省協会の理論研究が、国の最先端を維持しながら、時代の発展的テーマを把握し、焦点を当てるべき分野を特定し、有意義な成果を達成するための有限投資を行うことが重要だと述べた。
報告を受けた朱恒毅部長は学術委員会の3名の代表者の意見に同意した上で、3つのコメントを追加した:第1に、反邪教理論に関する研究は非常に有意義で、先見の明があり、実用的で、有益である。これは反邪教の取り組みに対する方向性、道筋、手段を示すものである。また、反邪教理論に関する研究の実行を重要視する必要がある。第2に、反邪教の取り組みの対象となる宗教団体について検討し、反邪教理論研究結果は度を越えて難解であったり、曖昧であったりしてはならない。インターネットに注意を向けるなど、現在最も重要とされている問題や現代社会の主要問題に焦点を当てる必要がある。なぜなら、これは市民が議論を交わし、プロパガンダが最も浸透する場であるためである。インターネットに起因する社会問題に焦点を当て、インターネットを駆使した反邪教の取り組みに関する研究を掘り下げ、理論研究の重要性を強調し、現実対処能力を向上しなければならない。第3に、浙江省独自の優位点を活用し、習近平総書記の邪教に対する重要な議論を取り入れつつ、省の現実に即して理論研究を行うことに焦点を当て、新時代の中国人の特徴と習近平の社会主義的思想の理論成果をめる。同時に、反邪教理論研究は農村経済活性化戦略、「2名の高官」ポストの設置、時代背景に基づく発展対象分野の特定も行う必要がある。
最後に、劉力偉会長が学術委員会代表者の推奨事項と朱恒毅部長の意見に同意した。反邪教理論研究は誠実に習近平総書記の反邪教の取り組みに対する重要な議論を取り入れ、浙江省の現実に即して実行される必要がある。反邪教理論研究を実行する際は、実際の取組みに基づき主要研究課題を決定し、研究は公的プロセスを介して促進することができる。
会議は学術委員会の意見に満場一致で同意し、24件の研究課題(主要課題8件と一般課題16件)を決定し、プロジェクトに総額40万元の予算を割り当てるための決議を採択した。会議後、省協会の書記が学術委員会の意見を取り入れプロジェクトの課題リストを作成し、速やかに発表することになっている。各課題の責任者は課題研究規則に従い理論研究を行うことが要請される。
出席者:劉力偉、朱恒毅、金国華、張炳福、王来法、王志成、陳永革、盧林方
案内係:鄭華偉(チャン・ファウェイ)(劉力偉同志の秘書)、上官辰晨(シャングァン・チェンチェン)、郭映(グォ・イン)、瀋瑞(シェン・ルイ)、楊翔(ヤン・シャン)(省協会の事務局職員)
浙江省反邪教協会
2018年6月24日
2018年7月10日浙江省反邪教協会作成
浙江省中国共産党邪教防止対応首脳部事務所および浙江省反邪教協会による共同文書
浙江省委員会事務所(2018年)第45号
2018年度浙江省反邪教協会研究課題に関する告知
反邪教協会、大学、党校各位:
浙江省反邪教協会研究課題管理規則に基づき、浙江省反邪教協会の学術委員会の専門家の意見に従い、2018年度の研究課題として、それぞれに3万元の予算が割り当てられる8件の主要課題とそれぞれに1万元の予算が割り当てられる16件の一般課題、合計24件(主要課題8件、一般課題16件)の課題が承認されました。ここに承認された課題を発表します。
各課題の責任者が所属する組織は、研究の指導および管理を実質的に強化することが求められます。各課題の責任者および主要メンバーは提出した研究計画の要件に慎重に従い、研究を組織し、実行しなければなりません。質と量の双方の要件に従い研究を実施し、期限内に完了させ、省の反邪教の取り組みの理論的支援を行い、知的審査に耐え、反邪教理論研究および宣伝活動を一層推し進めるのに貢献する研究結果を提出する必要があります。
省協会は中間審査とプロジェクト合否判定を行います。中間審査は通常同年11~12月に実施されます。プロジェクト合否判定は、契約に明記される研究期間終了日から30日以内に行われます。研究完了前に、研究チームはプロジェクトを完了させるための準備をし、プロジェクト完了資料を提出しなければなりません。
浙江省中国共産党邪教防止対応首脳部事務所
浙江省反邪教協会
2018年7月16日
添付資料:
浙江省反邪教協会の2018年度研究課題リスト
番号 / 課題名 / 研究責任者 / 所属組織 / 備考
- 浙江省での域外邪教心理的矯正講義に関する研究 / 徐敏(シュ・ミン) / 浙江師範大学 / 主要課題
- 邪教をベースとしたオンラインソーシャルゲームに対する予防策に関する研究 — 青少年のケース / 唐燕(タン・ヤン) / 寧波大紅鷹大学 / 主要課題
- 邪教への熱狂の是正に関するソーシャルワーク研究:浙江省の全能神教会のケース / 王文武(ワン・ウェンウー) / 舟山市委員会党校 / 主要課題
- 教育による改心の強化・統合、邪教信者の洗脳解除の統合理論に関する研究 — 浙江省縉雲県の法輪功のケース / 陳麟(チェン・リン) / 浙江大学城市学院 / 主要課題
- 浙江大学の邪教に対する学生の認識、姿勢、態度に関する研究 /羅一華( ルオ・イーファ) / 浙江師範大学 / 主要課題
- オンラインコミュニティを用いた大学・単科大学での反邪教の取組みに関する研究 / 付百峰(フー・バイフェン )/ 湖州師範学院 / 主要課題
- 破壊および偽物:キリスト教を装う邪教団体全能神教会とキリスト教の関係に関する研究 / 王凱元(ワン・カイユァン) / 仙居県委員会党校 / 主要課題
- 欧米社会の新興宗教の正当性および啓発実績に関する研究 / 欧陽愛権(オウヤン・アイクァン )/ 温州医科大学 / 主要課題
- 法律に基づき政府が監視する農村地域での反邪教の取組みに関する考察 / 祝燕(ジュー・ヤン) / 江山市党校 / 一般課題
- 海外の反邪教青田パラダイムとその発展に関する研究 / 周黎(ゾウ・リー) / 青山県反邪教協会 / 一般課題
- 邪教被害者の社会復帰に関する研究 — 事例に基づく地域分析 / 鄭偉武(チェン・ウェイウー) / 縉雲県反邪教協会 / 一般課題
- インターネットを用いた邪教の普及と防止 / 于海騰(ユー・ハイテン )/ 舟山市委員会党校 / 一般課題
- 20世紀のアメリカにおける政府非公認のアンチカルト運動から、中国が邪教の信者の社会的支援と教育を推進するで学べること /周慶(ゾウ・キン) / 浙江省警察大学 / 一般課題
- 呼喊派(Shouters)への改宗に対する「温州モデル」の研究 / 方耀(ファン・ヤオ) / 温州医科大学 / 主要課題
- 大学および単科大学での効果的な長期反邪教メカニズムの導入および向上に関する研究 / 段曹剛(ドゥアン・カオガン) / 浙江技術専門学校 / 一般課題
- 大学および単科大学の反邪教メカニズムに関する研究 – 温州市の大学および単科大学のケース / 李超(リー・チャオ) / 温州医科大学 / 主要課題
- 温州市の大学および単科大学の反邪教早期警告メカニズムに関する研究 / 張一靚(チャン・イリアン) / 温州医科大学 / 主要課題
- インターネット時代の大学および単科大学における反邪教の取り組みに対する新トレンド・新戦略に関する研究 / 朱路遥(ジュー・ルヤオ) / 浙江商科専門学校 / 一般課題
- 邪教から大学生が身を護る能力を向上させるための対策に関する研究 / 李安(リー・アン) / 浙江万里大学 / 一般課題
- 仏陀・悪魔に関する考察 — 仏教と邪教間の戦いに関する研究 / 能進(ネン・ジン) / 中国仏教大学普陀山大学 / 一般課題
- 全能神教会という邪教団体の教義に対する批判:国内法規とキリスト教の教義という2つの観点からの研究 / 張鑫炎(チャン・シンヤン) / 浙江大学城市学院 / 一般課題
- 民間信仰の普及に対する文化的回避メカニズムに関する研究 / 張宇(チャン・ユー) / 温州医科大学 / 一般課題
- 大学生の信仰とマルクス主義の宗教に対する視点の教育に関する研究 / 賀書偉(ヘ・シュウェイ) / 台州職業訓練校 / 一般課題
- 中国共産党第18回全国代表大会以降の習近平の宗教政策の基本路線およびその重要性に関する研究 /刁小行(ディアオ・シャオシン) / 温州医科大学 / 一般課題
中国反邪教協会、浙江省党委員会の邪教防止対応首脳部事務所、省科学技術協会、省関連部署、浙江省反邪教協会会員、企業協会、大学および単科大学の研究部、反邪教協会に写しを配布する
2018年7月16日 浙江省中国共産党邪教防止対応首脳部事務所作成