2018年9月、中央統一戦線工作部(UFWD)は初めて中国全土を対象とした監督プログラムを実施した。これは中国共産党の中央委員会が開始したプログラムであり、中国全土の省と自治体の宗教政策の実施状況をチェックするものである。
Bitter Winterが入手した会議の文書と音声により、中国全土にて同国史上最大の規模で、反宗教プログラムが監督されていることが明らかになった。
中国北西部に位置する甘粛省から得た文書には、「この度、党の中央委員会は宗教の取り組みに関して全国規模で監督を行うことを決定した。これは中国史上初めての試みであり、中央政府の政策と取り決めが実際にどれほど高度に、幅広い範囲で、徹底的に奨励され、実施されているかを精査し、評価することが目的である」と記されている。
このプログラムは二段階から成る。「自己調査および是正」の段階では、省および自治体の当局は、それぞれの管轄において実施されている反宗教の施策を評価し、UFWDに報告することが義務付けられている。
10月25日に始まった第二段階では中央政府の職員のチームが中国全土に派遣され、「自己調査」の成果を精査し、今後の宗教関連の政策において変える必要のある問題点を特定する。
例えば、中国中央部の河南省にある市の当局は、改善を必要とする反宗教の施策として、インターネット上のプロパガンダ、「愛国的」な聖職者の推奨、地下のカトリック教会と韓国系の教会の取り締まり、学校と大学での宣教活動の予防等を挙げている。
その他の省や自治体では、政府公認の教会を含む宗教施設の財政の管理や共産党員の信仰の根絶等が困難な問題として浮上している。
第一段階目の「自己調査」の一環として、中国東部の山東省の当局は、9月に地域の職員に向けてビデオ会議を実施した。この会議では、中国国内に大勢、何らかの宗教の信者が存在する事実を鑑みると、宗教の問題は事実上政治の問題であると何度も繰り返し指摘されていた。また、宗教は単なる個人の信仰ではなく、耳を傾け、信頼し、従う相手が誰なのかという基本的な問題に関わるものであると強調されていた。
この会議で当局者は繰り返し「政府に関する望ましくない世論」を避けるため、この運動が外部に漏れないことの重要性を説いていた。そのため、文書や通知を宗教団体に送らないこと、そして、反発を避けるためにも宗教団体の関係者と会わないことを求めていた。政府の職員は、公共の場でこのような話題の会話を交わす行為、そして、調査を実施する行為を禁止されている。さらに、国際社会が中国の宗教政策を批判する事態に発展する可能性があるため、海外への情報漏洩の予防を重視する声も上がっていた。
調査の漏洩を防ぐため、中央政府の職員は、現地の職員による不正行為や違法行為に関する一般市民からの報告を受ける行為を禁じられている。
「これは広範囲で行われる取り組みであり、中国全体を対象とする。我々は慎重に取り組みを実施し、問題を回避しなければならない」と地域の政府職員は語った。
河南省の調査チームには、守秘義務に関する指示が繰り返し行われていた。「内部では集中し、外部ではリラックスする」、「口外せずに実行する」、「調査と監督の通知を宗教団体に送らない」、「調査と監督の取り組みの進捗状況を報告しない」、「メディアの取材を受け入れない」を忠実に守る必要がある。
中国共産党の内部文書によると、2019年1月以降、中央政府の調査隊は今年の成果に応じた「調整」に焦点を絞るという。これと併せて、新たな宗教弾圧が行われる可能性が高い。
江涛による報告