一挙手一投足を見張る顔認識などのハイテク機器のために、普通の人々が牢獄の中で生活しているような息苦しさを感じ始めている。
新疆ウイグル自治区 の住民は、かなり以前から 中国共産党 の「デジタル圧政」の下で暮らしている。数えきれないほどの監視カメラがやることなすことのすべてをとらえており、礼拝所だけでなく自宅に入るにも顔やIDをスキャンしなければならない。このような過酷な方策のために、人々の暮らしは恐ろしい悪夢に変わり果てた。
新疆方式の監視体制が、今では漢族も対象にして急速に中国各地に広まっており、国全体が巨大な牢獄になる日も近そうだ。
2019年6月、中国南東部、江西 省 のある地域の 公安局 で、管轄下の住宅団地に195台の監視カメラが設置された。IDカードスキャナや顔認識システムをはじめとするハイテク監視機器も入口に取り付けられた。システムには全住民の個人情報が入力され、団地に出入りするすべての人が登録済みとなった。
この団地の物件管理作業員によると、顔とIDカードをスキャンしなければ入場できないという。眼鏡やマスクをかけた状態で顔をスキャンすると、入口で拒否され、「あなたの顔はねつ造です」、「人間ではありません」といった機械音が流れる。ID情報と顔認識が適合しなければ、機器はそのデータを警察に送信する。国が「ブラックリストに登録した」人物が顔やIDカードをスキャンすると、自動的に公安局に通知され、警察が来て逮捕する。
作業員は、一度スキャンすると顔の図像とID情報がシステムに残り、人々がどこへ行こうと監視が続けられることを強調した。
「住民の安全に役立つ優れたシステムです」と作業員はどこか得意げに言った。しかし、地元の住民はその考え方に同意しない。
団地のある住民は不満を漏らした。「もてなしの料理の手を離せないのに、客が到着したら階下まで降りて迎えに行かなければならないんです。とてもわずらわしいです」。
「毎日、自宅を出入りするたびに見張られています。いつも、誰かに見られている気がして息苦しいです」と、団地に住む女性は言った。
顔をスキャンする必要があるのは住民だけではなく、訪問客も同じ手順を踏まねばならない。システムが客の情報を訪問先の住民と結びつけるのだ。
住宅団地への入場を拒まれたある訪問者は文句を言った。「友人や親族を訪ねるときでも顔をスキャンしなければなりません。そして、個人情報は監視されています。深刻な 人権 侵害でしょう。このようなハイテク顔認識システムを設置することで、中国共産党は私たちの首に縄をかけ、動物を扱うように操ろうとしているのです。実に邪悪でばかげています」。
昨年以降、中国各地の住宅コミュニティで類似の顔面スキャン機器が設置されている。中国本土のメディアの報道によれば、7月19日以降、北京公営住宅センターが管理する13の公営賃貸住宅の住民全員が帰宅の際に顔をスキャンする必要があるという。69,000人を超える賃借人と64,000人あまりの同居人の情報が顔認識システムのデータベースに登録されている。
官製のメディアは、この顔認識システムの第一の目的は「又貸し防止」であり、住民の安全を守るためのものだと主張している。しかし、批判者は、中国共産党が人権を侵害し、完全監視体制を実施している事実のさらなる証拠に他ならないとして異議を唱えている。
計画では、さらに多くの人々の情報をデータベースに追加し、10月末までに北京公営住宅センターが管理する59の公営住宅で顔認識システムが全稼働している予定だ。
大規模監視は、反体制派、宗教団体メンバーなど政府のブラックリストに登録されている人々に特に弊害をもたらす。当局が彼らの個人情報を取得すれば、迫害や逮捕が容易になる可能性があるからだ。
家庭教会 の多くが賃貸住宅やキリスト教徒の自宅を礼拝所にしているが、ハイテク監視の下、信者らが集まるのはさらに困難かつ危険になりつつある。
「集まりに出たり、仲間の信者を訪ねたりするために居住区に入ろうとすると、誰を訪ねてきたのか、いつまで滞在するのか、何をするのかとしょっちゅう聞かれます。警備員はこういった訪問記録を全部持っていて、私たちの誰かが逮捕されれば、誰がその人を訪ねたか、一緒に集まったかがすぐに分かるようになっています」と、ある家庭教会のキリスト教徒は言った。そして次第に厳しくなる監視に息が詰まりそうだと訴えた。
唐哲による報告