中国政府はあらゆる手段を用いて、ある勇敢な行動を隠そうとしている。救助に活躍した人物の家に十字架があったためだ。
2018年6月上旬、李守発(リ・ショウファ)さんが、中国中央部、河南 省 信陽 市 平昌関 鎮 にある 村 の池のほとりを歩いている時、助けを求める叫び声を聞いた。声がする方へ向かうと、2人の子供が池の中に落ちていた。2人の60代の住民が深さ6メートルの池の中に入り、子供たちを救おうとしたが、溺れてしまった。
李守発さんはすぐに池に飛び込み、駆けつけたその他の住民の助けを借り、4人を岸に引き上げ、4人のうち3人の命を救った。
通常なら、李守発さんの勇敢な行動のニュースは地域全体に広まるはずである。しかし、鎮の政府はこの事実の公表に消極的であった。李さんは大勢の人々から称賛を受けていたものの、現地のニュース番組が勇敢な行為を簡単に報じただけであった。
7月10日、英雄の名前を知った信陽イブニングニュースの2人の記者が、李さんを取材し、このニュースはインターネット上で広まった。すると、ある民間の団体が1万人民元(約16万2,000円)を褒賞として提供することを申し出て、現地の政府から李さんに渡されることになった。
その後、政府の職員は重い腰をあげて、渋々李さんの自宅に向かった。しかし、「あなたの家には十字架がある。そのため、褒賞の授与は難しい」と言い、褒賞の提供を拒んだ。
李さんの妻はキリスト教徒だ。この事実を把握した現地の政府は、李さんの勇敢な救出劇を公表することを嫌がるようになった。
情報提供者の住民は「今年、政府は強引に信仰を取り締まっています。宗教が関連すると、高圧線に触れるような反応が起きます。李さんの自宅に十字架がある事実により、上位の政府は、現地の鎮の政府が宗教の根絶と十字架の撤去に適切に対処していなかったと判断するでしょう。すると鎮の政府職員は職を失うことになります。このような状況下で、政府がキリスト教徒の勇敢な行動を大々的に報じることができるでしょうか?」と話した。
一部の住民は、李守発さんがその勇敢な行動を上級の政府に伝えようと提案した。なぜなら、国の規則によると、李さんは名誉称号と金銭的褒賞を受ける資格があるからだ。しかし、この件を平昌関鎮の関連する部署に報告したものの、返答はいまだにない。
この件を耳にした平昌関鎮の党書記は激怒し、李さんに関する全ての報道をもみ消すよう要求した。そして、上位の政府への申請も認めなかった。
現地政府の職員は「英雄になって、褒賞をもらいたいなら、早急に十字架を壊しなさい。共産党に従わないなら、政治犯のような扱いを受けることになる。神を信じる行為はこの件(褒賞)だけでなく、今後にも影響を与え、子供たちの通学や就職にも影響が及ぶ可能性がある」と告げた。
この類の「見返り」は李さんと家族にとって予期したものではなかった。
一部の住民たちによると、褒賞を受け取るため、李さんの息子は密かに母の十字架を毛沢東の肖像画に二回置き換えようと試みたという。その結果、家族はこの件に関して不愉快な言い争いをしたようだ。
李守発さんと家族はいまだに1万人民元の褒賞を受け取っていない。
辛露による報告