過酷な弾圧にもかかわらず、全能神教会は中国で拡大しており、中国政府関係者によると、2014年の時点で信者の数は400万人に達しています。数千人の信者が海外に逃れ、そこで教会を創設しています。
マッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)
この記事は、もともとCenter for the Critical Study of Apocalyptic and Millenarian Movements(CenSAMM)が主催し、2018年6月28~29日にイギリス・ベッドフォードのパナセア博物館(Panacea Museum)で開かれた「Apocalypse in Art: The Creative Unveiling」シンポジウムの講演として発表されたものです。
近年、中国政府は、邪教を「腫瘍のように根絶」しなければならないと主張しています。中国司法局はこれらの「異端宗教」(「邪悪なカルト」という解釈は誤っています)を「迷信を交えて虚偽を捏造し、それを広めるなどの手段により、人々を混乱させ、欺く宗教集団」と定義しています。このような曖昧な定義に基づき、定期的に更新される公式な邪教リストに含まれる宗教集団が邪教とされています。邪教に積極的に参加することは、中国刑法第300条に基づき罰せられ、3~7年「以上」の懲役刑が科されます。
中国共産党が典型的な邪教として名指しする全能神教会(CAG)は、1991年に中国で誕生した新興宗教で、イエスは再来している、中国生まれの女性として真理に満ちた「全能神」として受肉したと説いています。全能神の発言のほとんどは『言葉は肉において現れる』という書籍にまとめられています。
中国政府は、2014年に起きた中国山東省招遠市のマクドナルドでの女性殺害事件を含め、さまざまな犯罪をCAGにかぶせることで弾圧を正当化しています。残念ながら、一部の欧米メディアは何度もこの事件でCAGを非難し続けてきましたが、学術研究により、これがCAGを非難するために広められた卑劣な虚偽報道の一例であることを明らかにしています。マクドナルドで起きた殺人事件は、実際はCAGと類似した名前の、全く関係のない別の宗教団体によるものでした。
過酷な弾圧にもかかわらず、全能神教会は中国で拡大しており、中国政府関係者によると、2014年の時点で信者数は400万人に達しています(実際の数よりも多く見積もって発表されている可能性があります)。数千人の信者が韓国や米国、ヨーロッパ、カナダなど海外に逃れ、そこで教会を創設しています。また、香港や台湾で創設した信者もいます。
CAGは、律法の時代(=旧約聖書の時代)、恵みの時代(=イエスが生きた時代)を経て、人類の第3かつ最終段階である時代「神の国の時代」を始めるために全能神が降臨したと説きます。この終わりの日における全能神の働きの主な目的は、人類の罪深い本性を一掃し、神により浄化された者を栄光ある終着点に連れて行くことです。
現在の神の国の時代は、千年神の国の時代と混同されるべきではありません。神の国の時代では、地上で神の栄光を称えることは、まだ完了していません。神に事前に運命づけられ、選ばれた者が浄化され、完全となったときに初めて、神の栄光が称えられます。このとき、救いの働きが完了し、邪悪な者が破壊され、義なる者が報われ、千年神の国の時代への移行が始まります。
全能神教会は、全能神として崇拝している人物が、地上で永遠に生きるとは考えていません。全能神が再び昇天することは、浄化の働きが終了したことを意味します。ヨハネの黙示録の中で予言される災害が、地震や戦争、飢饉の形で起きますが、地球が破壊されることはありません。地球は神が浄化した信者の永遠の住処となります。
CAGは、2012年に世界が終わると予言したことにより、暴動を扇動したと中国政府に非難されています。しかし、CAGの神学理論には世界の終わりの文言はなく(世界の終わりではなく、変革という言葉は使われている)、2012年に健在していた全能神の地球での使命が終わった後、聖書の中で予言されている災害が起きると記載されています。
CAGはキリスト教徒への弾圧を非難し、中国共産党をヨハネの黙示録の竜と重ね合わせています。しかし、CAGの書籍を読むと、竜の自滅は明らかで、弾圧は赤い大きな竜が終わりの日にいることを示すとしながら、革命を訴える言葉はありません。
中国における弾圧のためCAG信者が海外に離散したことにより、2つの意図しない結果がもたらされました。1つ目は、この宗教団体がグローバル化し、韓国や米国などで中国人以外が入信しています。2つ目は、海外や映画といった分野で、中国を離れて暮らす信者(=ディアスポラ)社会で、芸術活動が予期せず花開いたことです(これらの活動の一部は、国際映画祭などで賞を取っています)。
ここで、CAGの神学理論と映画スタイルがどういうものかを大まかに理解していただくために、ミレニアム映画作品シリーズの代表作、ミュージカル『人は皆もとの聖さに回復した(Human Beings Have Regained the Sanctity They Once Possessed)』(2016年)を簡単に分析します。
ミュージカルのオープニングは、人々が神に背を向け、地球が「闇」に覆われているシーンで始まります。これが、CAGの「地獄」の概念です。多くの人は大災害の中で命を落とし、暗い冥界へと落ち、そこから魂が互いに殺戮を繰り返す地獄へと降りていきます。彼らは悪魔に踏みつけられ、拷問を受け、永遠に刑罰を受け続け、まさに「地獄では、うじがつきず、火も消えることがない」(マルコによる福音書 9:48)状況にいました。その働きにより、終わりの日にいるのは、CAG神学理論では今日中国共産党に姿を変えたとされている赤い大きな竜だと分かります。これは常にキリスト教徒を残酷に弾圧し、人類を毒で害し、堕落させ、破壊してきました。終わりの日には、ヨハネの黙示録で予言されている未曾有の大災害が起きますが、地球が破壊されることはありません。
ミュージカルの第2幕では、「光」がメインテーマとなります。最終的に、赤い大きな竜と悪魔サタンの手先は天からの稲妻に打たれ一掃され、神に打ち負かされ、深淵に落ちていきます。
この映画の漫画のような続編が重要な部分で、何が起きたかを説明します。つまり、サタンに誘惑され、堕落した人類は、言葉(全能神の発言をまとめた書籍『言葉は肉において現れる』)で武装することによりサタンを打ち負かすことができました。
神の場所がない世界は暗く、希望のない空虚な場所です。しかし、神の言葉を聞き、神による救済を受け入れた人は、最終的に再び、光の中に戻ってくることができます。京劇調のパフォーマンスでサタンが完全に破壊され、神の言葉により神の創造物が再生したことを祝います。そして、『言葉は肉において現れる』の中の一節が響きます。「ああ、過去の堕落した世界がついに汚い水の中へと崩れ去り、水面の下に沈み、溶けて泥となった。ああ、わたしの創った全人類が、ついに再び光の中でよみがえり、存在のための基礎を見出し、泥の中でもがくことをやめた。」
最終的に、全能神の言葉を通して浄化され、完全にされた人々が変革した地上で永遠に生きます。「栄光」や「光」に関する記述が映画の半分を占めます。神に選ばれた人々は、神がサタンを打ち負かし、神の国が地上に現れたことを踊ったり、歌ったりしながら祝います。
『人は皆もとの聖さに回復した(Human Beings Have Regained the Sanctity They Once Possessed)』は、世界の終わりについて説く数多くの福音教会が作成する映画の前千年王国説とは異なるCAG独自の神学理論を伝えています。世界の終わりはありません。弾圧には終わりが来て、自然災害も起きますが、最終的には竜は打ち負かされ、全能神により浄化された人々が変革した地上で永遠に生きるのです。
この独自の神学理論は独自で異なる非伝統的なスタイルと合っており、京劇、Kポップ、伝統的なキリスト教の賛美歌、ラテンダンスを取り混ぜています。新しい神の国も、新しいアートスタイルで描かれています。
この講演の全編動画とビデオクリップを見る