三自教会の信者を登録することで、当然のようにキリスト教徒が説教の中で読むもの、聞くものも管理されるようになり、教会は隠れた党部署へと変えられつつある。
Bitter Winterはキリスト教徒全員を登録する大規模な取り組みが進められていると報じてきた。登録作業は進行中だが、中国共産党 は、集めた情報をますます中国の信仰を変えるために利用するようになっている。
2019年1月2日、中国南東部、福建 省 寧徳 市 で、40人を超える 三自教会 の牧師スタッフが召集された。市の 統戦部 から来た職員は、登録情報から三自教会の中でも別の教派に加わっている46名を特定できた、と告げた。牧師スタッフは信者の力学を把握しておらず、結果として非管理の教会へ彼らを「逃した」として批判された。
職員は牧師たちに、信者の動きを判断し、思想を突き止め、どの信者が別の教会に加わったかを把握するよう命じた。牧師らがその任務を怠った場合、責任を負うことになる、と職員は警告した。罰として給与が削られ、牧師職は取り消され、深刻な状況の場合は、犯罪責任を負う。
福建省莆田市にも類似の規制がある。地域の三自教会は会員の登録を済ませ、地元政府にIDカードのコピーを提出した。すると宗教局の職員は、教会の礼拝に出席している人々の人数を数えて、登録リストと比較するよう牧師に命じた。無登録の見知らぬ人物、教会の指導者にとって見覚えがない人物はすぐに逮捕される。
さらに地域政府の職員は、当局が警察官1人を任命し、5つの教会の管理に当たらせてキリスト教徒の動きを追っていることを明らかにした。管理の範囲を超える宗教活動に参加している者を警官が見つけた場合は逮捕するという。
中国東部の浙江省の平橋 鎮 の政府職員は、「邪教 が教会に入り込むのを防ぐため」という名目で、下王三自教会の全信者に氏名を登録するよう命じた。
「将来、ここで集会が行われるたびに出席者数が報告より少なくてはいけない決まりになる。超えるのもダメだ」と、政府職員は脅した。「たとえば、出席者80人と報告した場合、60人が出席するなら問題ない。出席者60人と報告して、80人が来てはいけない。もし余分の人数が集会に来た場合は、検査が入る」。
「政府の言うことに従うなら、教会は既に政府が管理する一部署になったも同然です」。三自教会の指導者は言った。
誓約書への署名を強いられる信者たち
2018年8月下旬、中国北東部の遼寧省灯塔市西大窯鎮にある三自教会の集会場は、全信者の氏名とIDカード番号、電話番号を地元の宗教局に提出するよう求められた。また当局は教会の指導者に「誓約書」への署名を命じた。この文書は教会を次の条件に縛り付ける内容である。
- 大規模な宗教イベントを開いてはいけない。
- 献金箱を設置してはいけない。
- 宗教的な内部出版物の編集、印刷、発行をしてはいけない。
- 宗教的な備品、手工芸品、出版物を販売してはいけない。
- 屋外に宗教に関係する像を建ててはいけない。
- 施設の外側に宗教的なシンボル(十字架、教会名の銘板など)を付けてはいけない。
- 宗教関連の訓練を実施してはいけない。
- 社会活動(慈善活動を含む)を行ってはいけない。
- 教会活動に外国人を関わらせてはいけない。
- 外国からの献金を受け取ってはいけない。
以上の要件を満たして初めてその施設は集会の開催を許される。
同市の別の三自教会は誓約書に署名した後、教会の十字架を強制的に撤去させられた。
宗教関連の書籍は制限され、説教は管理される
宗教的な書籍の制限も、当局が信者の思考を管理しようとしていることの表れである。中国北東部、黒竜江省鶏西市にある三自教会の信者はBitter Winterに教会で行われているスクリーニングについて明かした。彼の話によると、地元の 宗教局 が教会を繰り返し訪れては、抜き打ち検査を行うという。信者は、「甘露歌」や「栄光の礼拝」といった 中国基督教協会 以外が発行した本や歌集を使うことを禁じられている。職員はさらに教会の規制遵守を監視するために張り込みを行っている。
浙江省温州市の四坦三自教会の信者が、市の宗教局が携帯電話を使って教会の集会を記録したことを報告した。さらに政府は教会説教の内容をスクリーニングしたという。「主は間もなく来られる」、「主は我らの王」といった語句は歌集から削除しなければならない。
黒竜江省の佳木斯市にある2つの三自教会と、七台河市の桃西教会も「公的に発行された」もの以外の書籍の利用を禁じられた。
「私たちは歌集を(買う代わりに)印刷して、兄弟姉妹たちが節約できるようにしてきました」と教会の指導者は力なく言った。「しかし、(政府に)その本は海賊版だと言われました」。
党の思想に洗脳され、信仰を変えていく信者たち
信者たちは非公式の宗教関連書籍を読むことを禁じられる一方、教会を変える「四進」運動は拡大している。伝統的な中国文化の作品、「偉大な人物たち」の伝記、そして「赤色革命」に関する本が教会に導入されている。信者たちは反宗教的規制を学ぶことを余儀なくされている。
2018年11月下旬、黒竜江省七台河市のある三自教会の説教師が信者を呼び集めて「四進」を宗教会場に導入し、「社会主義核心価値観」をキリスト教の教義と規範に取り入れた。キリスト教を「中国化」の方向へ発展させるためだ。
10月、当局はハルビン市香坊 区 のある三自教会に 新宗教事務条例 を始めとする法と規制を学ぶことを要求した。教会の指導者は、信者たちが学んでいるのが分かる写真を撮って宗教局に送らねばならない。
河南省永城市陳集 郷 のある牧師はBitter Winterに伝えた。「宗教局は、集会のたびに最初に法と規制、社会主義核心の強み、社会主義核心価値観について説教させようとします。監視カメラが設置されるまでは、そのような話はせずに済んでいました。しかし今は従わなければなりません。間違ったことを言えば、罰せられます。規則を守らなければ、教会は閉鎖されます。この状況が続けば、信者たちは(当局の)思想を教え込まれ、神に心を向ける余裕をなくしてしまうでしょう」。
華人基督徒公義団契の劉貽(リュウ・イ)牧師は、国家認定の教会の政治的使命は、中国共産党が三自愛国教会を設立してから変わっていない、と言った。具体的には、その政治的使命はキリスト教徒を党の望みどおりに変容させること、中国国内のキリストの従者を、キリスト教徒の身なりをした「党の従者」に変えることである。
林一江による報告