中国共産党は中国から逃亡した全能神教会の信者の情報を集め、諜報員とインターネット上のプロパガンダを用いて、難民に嫌がらせを行っている。弾圧に反対する者は中国の敵対勢力と見なされる。
全能神教会 は中国のキリスト教系 新興宗教団体 としては最大の規模を誇る。急激に信者を増やしたため、中国共産党 から脅威と見なされている。全能神教会は1995年に「邪教」に指定され、この年以降、中国で最も標的にされ、最も厳しい弾圧に晒されてきた。中国共産党の容赦ない弾圧の下、時に拷問や長期に及ぶ勾留を受け、一部の全能神教会の信者は海外に逃亡せざるを得なくなった。それでも当局は弾圧を諦めてはいないようだ。
海外の全能神教会の信者のデータベースを作成
中国共産党は、海外に逃亡した全能神教会の信者に関する情報を以前から集めている。Bitter Winterは中国北東部、遼寧 省 のある地域の政府が発行した文書『インターネット調査、海外調査及び「法輪功」やその他の邪教組織に対する取り締まりプロジェクトの実施作業計画書』のコピーを取得した。この2つのタイプの調査、そして、取り締まりのプロジェクトは公式の文書の中で「両排一専」と呼ばれることが多い。この文書は、法輪功、全能神教会、そして、その他の海外の団体のメンバーに関する情報を幅広く集め、完全な「海外の邪教信者のデータベース」を作成する取り組みを要求している。
「海外の調査」は2つの特定の方法を含む。第一では、邪教に指定された宗教団体の海外に逃亡した信者の情報を総合的に収集する。中国での名前、海外で使用している名前、性別、写真、現在の国籍、海外で実施した活動、新しい個人識別書類(個人識別カード、パスポート、グリーンカードまたは難民に関する書類)のタイプやデータ(身分証の期限、生年月日、中国を出国した日付等)等の情報が求められている。また、可能な場合は、顔認識と比較を実施する必要がある。
第二の方法は、中国の出入国の情報を突き止める段階だ。中国共産党が活動を禁止する宗教団体の重要人物を精査する。中国をまだ出国していないこういった人物が、海外渡航するための適切な書類を持っているかどうかを確認する。そのため、公安の「邪教信者情報管理システム」と2014年以降の法輪功及び全能神教会に関する過去の捜査記録をフル活用し、信者が出入国証を保持しているかどうかを特定する。
スパイとインターネット上のプロパガンダ
2018年、遼寧省のある地域の政府が『法輪功及びその他の邪教組織に対する阻止と抑圧に関する特別運動の計画書』を発行した。この文書は「海外の全能神教会の主要なウェブサイトへの侵入の管理を課すことで、同団体の信者の構成と中国内外の組織のシステムを調査し、把握する」と規定している。
全能神教会によると、海外在住の個人のメールアドレスとソーシャルメディアのアカウントが頻繁に攻撃を受けているという。大勢の信者が、コンピュータのスクリーンに表示された「メールアカウントが政府の支援するハッカーによって攻撃されている」と指摘する警告を目にしている。
また、中国共産党のスパイが、インターネット上で全能神教会の信者を装い、海外の信者のコミュニティに接触している。この侵入により、中国共産党の弾圧から逃れた信者は、海外にいても不安を感じている。
「中国共産党のスパイを見つけることは可能です。スパイは宗教を重視していないためです。教会の指導者と中国の国籍を持つ通常の信者の個人情報を知ることだけに執着しています」と韓国在住の全能神教会の信者はBitter Winterに語った。
この信者は韓国在住のスパイの例として、親中国共産党の呉明玉(オ・ミュンオ、오명옥)氏の名を挙げた。呉氏は、ソウルにある全能神教会の敷地内に「教会の福音を調べる」ことを理由に入り、信者と教会に関する質問を投げ掛け、当時施設内にいた人々の写真を撮影した。全能神教会の信者たちは、呉氏が親中国共産党の「反 カルト 主義」のメディアを運営し、中国当局と緊密に連携して信者の家族を韓国に向かわせ、全能神教会に対する偽の抗議活動に参加させていたことを後になって把握した。
韓国の当局に対し、亡命を申請している全能神教会の信者の国外退去を迫るためのこの類のやらせの抗議活動は、ソウルの全能神教会の施設の外側で中国共産党によって何度も計画されている。7月22日もやらせの抗議活動が行われた。
また、呉明玉氏は、中国国内の家族に対し、韓国に出向いて信者を説得し、帰国させるための「親族を探す団体」の結成を支援している。原則として、禁止された団体の多くの信者は帰国後に逮捕され、連絡が取れない状態である。
また、中国共産党は大規模なサイバー軍隊を動員し、全能神教会及びその他の邪教団体に対し、やらせのコメントや世論の操作、そして、プロパガンダを介してインターネット上で中傷している。
分裂と崩壊
中国共産党は取り締まりの主な対象として海外の全能神教会の指導者に狙いを絞っている。2018年、遼寧省の地域の政府が『法輪功及びその他の邪教組織の阻止と壊滅のための特別行動計画書』を発行し、これらの宗教団体の海外の重要人物の取り締まりを強化するよう求めた。この通知は「極秘の攻撃の計画及び立ち上げ、内部スパイの強化、重要人物及び活動に関する情報の特定、内部の早期警戒及び深いレベルでの手掛かりの取得」等の特別な措置を挙げている。さらに、「適切なタイミングを選び、手段を問わずに攻撃を実行」することを求めている。
先程触れた2015年に遼寧省で発行された文書も同様の規定を設けていた。「信者に関して突き止めた情報を基に、[当局は]各信者を調査し、信者の国内のつながりや関連する経歴を考慮して、特別な業務計画を策定しなければならない。党中央邪教問題を防止および処理する領導小組 が計画を承認した後、弾圧、解散、弾圧及び抑止に関して方策を実施する必要がある」。
全能神教会へのあらゆる支援は中国共産党への敵対行為
Bitter Winterは2019年に中国北部の山西省の地域の政府から発行された別の文書も入手している。当該の文書『全能神邪教組織の損害と対策に関する調査の通知及びその他の議題』は、中国共産党が10年以上前から海外の全能神教会に対する運動を実施してきたことを示している。
全能神教会の信者の調査に加え、この文書は同団体を支援する組織と個人の調査も求めている。「海外の全能神教会が得た政府及び非政府の支援」の特定、そして、中国共産党が「敵対勢力」と見なすその他の個人と団体との接触に関する情報を要求している。
「敵対勢力」に米国が含まれていることは明らかである。1月、政府系メディアの『大公報』紙は「信教の自由を推進する」名目で全能神教会を支援したとしてマイク・ペンス(Mike Pence)副大統領を糾弾する記事を配信した。また、この記事は、全能神教会を支援及び保護する「いつもの手」を使っているとして国務省も非難しており、この行為に関して、中国共産党は「邪教を用いて分離主義活動を行っている」と主張している。
白勝一による報告
最終更新:2019年7月29日