かつてないほどのレベルでウイグル人のイスラム教徒を同化させる取り組みが一斉に行われているが、今年の春節、習近平主席が夢見る「大家族中国」が実現に近づいた。
ルース・イングラム(Ruth Ingram)
春節の熱気が中国中央部を包むなか、中国政府のテロリズムとの戦いの邪悪の側面が、知らぬ間にこの祝祭にも及んでいた。万里の長城を越え、3000キロメートル進むと、豚年(中国では「亥」は「猪」ではなく「豚」を意味する)の2019年、ウイグル人 のイスラム教徒を 習近平 主席が掲げる新しい時代に従わせるための新たな取り組みが目に入ってくる。
56の民族を一つの旗の下に団結させる容赦のない実験を進める上で、今年ほど最悪な年はない。なぜなら、ウイグル人のイスラム教徒にとって、豚と豚肉はイスラムの戒律違反を暗示するためだ。
しかし、これは偶然ではないのかもしれない。今年、ウイグル人は、無理やり「家族」として押し付けられた漢族、そして、同胞の友人と春節の祝祭への参加を強要されている。昨年以降、100万人の漢族の中国人の当局の職員が 新疆ウイグル自治区 の至る所に派遣され、ウイグル人の農家の「親戚」として暮らしている。この取り組みは、ウイグル人にとっては、傷に塩を塗るようなものであった。なぜなら、「教育による改心」のための強制収容所 に送られるウイグル人が100万人に達し、裁判を経ない投獄が横行し、また、新疆 に存在するイスラム教徒の「ウイルス」の除去という中国政府が公言する野心に合わせ、ウイグル人が姿を消すという、前代未聞の弾圧が2年も続いていたためだ。
報告によると、イリ・カザフ 自治州 の中心部から離れたイスラム教徒が暮らす村々に豚肉が配給され、春節の祭典が始まったようだ。これはイスラムの慣例を阻止するために政府が実施してきた、その他の取り組みに沿ったものだ。この地域のモスクは閉鎖または破壊され、金曜の礼拝は過去のものとなった。
ウルムチ 市 の中心街に店を構えるトゥルサンさんは「怖くてモスクには行けません。昨年、入り口でIDカードの提示が求められました。モスクに行くと、身元確認され、再教育またはそれ以上の面倒に巻き込まれるかもしれないのです」と話した。大勢の人々とともに礼拝に参加し、礼拝後に昼食やアイスを食べながら友人と交流する金曜日はトゥルサンにとって、一週間で最も楽しみにしていた曜日であった。「現在は普段の挨拶「アッサラーム・アライクム」や別れ際の言葉「神のご加護を」さえも禁止されています。かつては食後に堂々と祈りを捧げていましたが、今は怖くてそれもできません。人々は私たちの全ての言動を監視しており、カメラも至るところに設置されています。私たちに神への信仰をやめさせ、中国人になってもらいたいのです」と続けた。
ウイグル人は毎年春節を避けてきた。この祝日を嘲笑し、深夜0時から2時間行われる花火や悪霊を退治するための爆竹がもたらす大気汚染について文句を言う頑固な者もいれば、春節を単純に無視して、仕事や学校の休みを楽しむ者もいる。大学で数学を学ぶアフメトジャンさんは「この時期は私たちの新年ではありません。私たちはイスラム教徒としての独自の伝統を持ち、ラマダンとコルバンという独自の宗教の祝祭を祝っています。イスラム教徒の新年の祝日は3月21日のナヴルーズです」と話した。さらにアーメトヤンさんは「私たちは漢族に自分たちの祝日を押しつけてはいません。それなのに、なぜ漢族の祝日を押しつけられるのでしょうか?」と加えた。
今年、春節の祝祭の主催者たちは、例年以上に強硬な姿勢で臨んだ。ウイグル人の生徒たちに新年を祝う曲の踊りと歌を強制させ、伝統的な中国の衣服を着させ、そして、「中国化」の進展の証拠を示すためにウイグル人の政府職員に漢族とともに食事をさせ、酒を飲ませ、さらに、一般のウイグル人の市民には家のドアの両端にお馴染みの幸運を祈る赤い垂れ幕を貼らせて、忠実な中国の市民であることを示させていた。
政府公認のウェブサイトおよび新聞は、春節を家族および中国の「親族」と祝うために急いで家に帰り、赤い提灯を街頭に吊るし、幸運を祈る対聯(二行の句)をドアの枠に貼り、そして、漢族の新年を祝う食べ物の餃子を作るウイグル族の地区の様子を伝えていた。報道番組から玄関先でインタビューを受けたウイグル人の市民らには、収容所に連れ去られた親戚や友人がいるはずだが、祝日を心から楽しみ、習近平主席および主席の中国に対する計画を一同に称賛しなければならなかった。自分の身を守るためだ。
「教育による改心」のための強制収容所、そして、親が連行され、置き去りにされる孤児が激増する不吉な状況にあっても、現地に暮らすウイグル人の政府職員には、過去の権力者のなかで最も優れていると同意した、この地域の指導者を熱烈に支持する以外の選択肢はなかった。
習近平主席は春節の演説で、愛国主義とひたむきな社会主義を強く求めた。そして、『新疆日報』紙はテロリズム、分離主義、過激主義の「三悪」との戦いを継続する必要性を繰り返した。同紙は、この戦いは長期化すると見ており、とりわけ、内部から国を破壊することを望む「表面下に潜む」二つの顔を持つ政府職員がもたらす危険を予測している。政府は教育、宗教および公共部門における思想の過ちを粛清する取り組みを強化すると見られている。
「勇気を持って声を上げ」、敵の勢力の再編成や社会における社会主義の教えの無意識のうちの衰退を防ぐために、魔女狩りを命じたスローガンは、毛主席 の時代および 文化大革命 の表現を彷彿とさせる。「母国を愛し、人々を愛し、中国共産党を愛せ!」。「共産主義者の食べ物を食べ、共産党の資金を浪費している潜伏中の「二つの顔を持つ人々」を「一掃」し、二度と成功させてはならない。」
新疆のウイグル人に対する今年の春節のメッセージは明白だ。習近平主席、そして、主席が掲げる新しい中国のビジョンに服従し、同化しなければ、滅びることになる。この流れが止まることはないだろう。好戦的なフレーズが用いられ、残忍な手段が採用されている。