古代の寺院が活動センターとして転用された後、信者は目の前に神の像がない状態で秘密裡に礼拝を続けている。
高齢者向けの活動センターで、敬虔な仏教徒が鉄板の壁に向かって礼拝をしていた。「菩薩さま、仏陀さま、ごめんなさい。このような環境になるのを防ぎようがありませんでした。私には何もできません」。そこには神の像やその他の宗教的シンボルや象徴は何ひとつ見えない。それは壁の裏側にあるのだ。その活動センターはかつて古代の寺院であった。
中国中央部の河南 省 都である鄭州 市 恵済 区 にある古代の寺院は信者の人気が高く、さまざまな歴史的、宗教的工芸品を所蔵していた。その中には中国清朝の乾隆帝(1711年~1799年)と光緒帝(1871年~1908年)の時代から残る石碑2点も含まれていた。
その荒れ果てた状態を見かねた村民らは古代の寺院を改装する資金を集め、2017年6月から中国の宗教管理政策の規定に従って必要な許可証を得るべく方々の事務局を渡り歩いた。驚いたことに、地元の宗教局は信者が出した許可証の申請を却下しただけでなく、寺院の活動を妨害したり、口を出したりするようになり、ついには礼拝を一切禁じた。
2018年10月、地域の宗教局の抑圧を受け、地元職員は作業員に命じて寺院内にあった寄付者の名を刻んだ石碑をシートで覆い、「社会主義核心価値観」を推進するポスターを貼った。寺院の門の上に掲げられていた「観霊宝殿」の看板は「高齢者文化センター」に書き変えられた。寺院は転用されたのだ。これは宗教が弾圧されている今の中国では日常茶飯事である。
2か月後、寺院内のすべての仏像と仏教のシンボルはこのために設置された鉄板の裏に隠された。信者が近寄れないようにするためだ。しかし、人々は今もやって来ては密かにお布施を捧げ、鉄板の壁の裏に隠された仏陀を拝んでいる。
地元職員が明らかにしたところによると、中国政府の各階層に宗教弾圧を遂行したことを確実に報告する責任があるという。「宗教管理局の中央査察団が草の根レベルで取り締まりが行われていないことを発見すると、責任者を出すように言われます」と、職員は説明した。「当局は『話』があると言って呼び出し、党会員の地位をはく奪したり、党内規則で懲戒処分にしたりします。深刻な職務放棄の場合は完全に任を解かれます。するとその後の将来も危うくなります。中央政府の政策実行に協力するより他はありません」。
動画: 古代の寺院の仏像が礼拝者の目から隠される前と後。
韓生による報告