中国政府が市民同士を戦わせる毛沢東時代の政策を推進するなか、同政府はあらゆる村々で対抗意識を高めている。
中国共産党 は楓橋経験の拡大に伴い、大規模な新しい政策「一つの 村、一つの警察」の実施に取り組んでいる。これは市民同士に通報させる一種の「治安維持」の方法である。この新しい政策は中国全土の村々で当局の存在感を高めることになると見られている。また、宗教を信仰する者を見つけ出すことを要求する命令が既に出されている。
中国中央部、河南 省 の「村の警察官」を自称する肖(シャオ)さん(仮名)はBitter Winterに現地の 派出所 から届いた通知の写真を提供した。この通知は、村の警察に対し、宗教を信仰する全ての村民を捜査し、特定することを求めるものであった。
実は肖さんは通常の警察官ではなく、予備警察の一員に過ぎない。2019年、地方の奥深くにまで浸透している予備警察部隊が、楓橋経験を推進するための取り組みの一環として、中国全土に幅広く配備される見通しである。楓橋経験とは、宗教を抑圧する手段として住民同士の争いを促すものである。
肖さんに届いた通知には公印が押されていなかった。そのため、どの部署から送られてきたのかは分からない。しかし、この通知は村の警察が探すべき対象を明確に示していた。長期間海外に渡航した者、および、しばらくの間不在だった者、本名を記さずに賃貸物件に住んでいる者、そして、極秘の宗教の集会に参加している家族が捜査の対象に指定されていた。
肖さんは次のように述べている — 「長期間にわたり家に帰っていない者は、宗教を信仰しており、逮捕を逃れるために隠れている、または自宅から離れた場所で伝道活動を行っている可能性があります。既に海外に逃亡している可能性もあります。そのため、集中的に捜査しなければなりません。本名を明かすことに消極的な住民も逃亡中の信者かもしれません。従って、このような情報はすぐに通報しなければなりません。」
さらに肖さんは、宗教を信仰する村の住民を捜査する取り組みは2018年における主な仕事の一つだったと付け加えた。
1月7日に河南省の 公安庁 のウェブサイトで公表されたレポートによると、中国共産党中央政治局委員および中央政法委員会書記である郭声琨(グオ・シェンクン)は、12月に「一つの村、一つの警察」は新時代の楓橋経験の具体化および伝達手段であり、また、この取り組みは地方から都市および地域の統治に拡大されることになると指摘したという。
以前、Bitter Winterでも報じたとおり、楓橋経験の拡大をとおして、中国政府は、ゴミ収集作業員や家主に報酬を払い、宗教の信者を監視させる手法や 「赤い腕章」を着用した自警団を動員して「治安を維持する」手法等、民衆を動員して、市民同士を監視させ、通報させる取り組みを頼りとしている。
「一つの村、一つの警察」政策は村を警察化する。
これは「一つのグリッド、一つの警察」政策と呼ばれることもある。中国共産党の新しいシステムであり、村の地区を15-20世帯のグリッドに分け、各グリッドに専任の管理者を割り当てるというものだ。
村全体を担当する任務を割り当てられた警察官には、数名の予備警察官を割り振られることがある。また警察官は「警察の連絡所」を確立し、「民衆による阻止と民衆による統治パトロールチーム」を形成し、さらに情報隊員を任命する。情報隊員の任務には、警察官に協力し、情報を収集する、パトロールおよび監視を行う、政府の政策のプロバガンダを行う等の業務が含まれる。
予備警察官の肖さんはBitter Winterに対し、政府は予備警察官一人ひとりに特別な制服と専用の通信機器を配布していると話した。肖さんの主な仕事は村をパトロールすることだ。肖さんは職務質問を行う権限だけでなく、村に入る部外者や車を検査する権限も持つ。不審人物を見つけた際は、写真を撮影し、特別な機器を使って、公安システム内部のデータベースに送信することができる。
肖さんは「村の警察官の一部は村の委員会のメンバーであり2つの職を掛け持ちしています。しかし、大半の警察官は金のためなら何でもする悪党であり、住民の反感を買うことを恐れていません。一般的に村の警察官らは村の状況を比較的よく理解しています」と話した。
安徽省の複数の村でも予備警察官を募集している。政府は警察のスクーターと特別な制服を配布し、村全体をパトロールさせている。
あるキリスト教徒は「村の予備警察官の大半は村にいるごろつきです。世帯登録を確認するという理由で、予備警察官は多くのキリスト教徒の自宅に入って捜査し、家族について尋問しています。また、一部のキリスト教徒に対しては、写真を撮り、動画を録画しています。尾行することもあります」と述べている。
肖さんは、最近の主な仕事で 全能神教会 に参加する村の住民にターゲットを絞っている。近郊の7つの村が、割り当てられたグリッド内の全能神教会の信者に関する情報を既に報告している。
肖さんは仕事について次のように説明している — 「私たちの仕事はこれらの住民の情報を確かめることであり、信者の家族、家族の状況、携帯電話の番号、居場所、銀行預金等を完全に把握します。この情報はインターネット上にアップされ、省全体で共有されます。また、政府は私たちに全能神教会について学習する場を用意しています。そのうえ、競争、評価が行われ、全能神教会の信者を多く通報した村の予備警察官に対する報酬も用意されています。」
現在までに河南省は4万5,197人の予備警察隊を展開し、9,834人の通常の警察官を地域に割り振り、3万9,150ヶ所の予備警察隊の事務所(移動可能な小型の交番もある)を設置した。
皮肉にも一部の 三自教会 は予備警察の事務所に転用されている。安陽市木廠屯村にある三自教会もその一つだ。この施設には「一つの村、一つの警察木廠屯村警察事務所」と記された看板が掲げられている。
地方における宗教の制限を求める第一中央文書『地方活性化戦略の実行に関する意見書』から、多数の監視カメラを地方の地域に設置した「シャープアイズ(鋭眼)」プロジェクト、そして、現在の「一つの村、一つの警察」システムに至るまで、当局が地方の統制を強化していることは明白だ。
江涛による報告